|
生体リズムは「朝の光」がつくる
生体リズムというのは、地球の公転や自転に合わせた人体の生理的なリズムのこと。人間だけでなく地球上の生物すべてが持つリズムで、公転(1年周期)に関係した「季節リズム」の例としては、鳥の渡りやクマの冬眠などが有名。
ヒトの病気にも秋から冬にかけて気分が落ち込んで「うつ」状態となり、過食や過睡眠の症状がみられる「冬期うつ病」が知られています。
自転に伴う昼夜(明暗)リズムを基にしているのが約24時間周期の「概日(がいじつ)リズム」(サーカディアン・リズム)で、特に医学的に重要視されています。
このリズムの例では、体温があります。体温は午後4〜7時に最も高くなってから夜になるに従って低下し、早朝の4〜7時に最低となって再び上昇に転じます。こうしたヒトの体温リズムは、昼夜の明暗サイクルに一致して変化することがわかっています。
また、ホルモンの分泌にもリズムがあり、副腎皮質ホルモンは睡眠中の後半に分泌され、「寝る子は育つ」という諺の通りに、成長ホルモンは深い睡眠中に分泌されます。さらに、自律神経のうち交感神経は昼間に、副交感神経は夜間に働きが活発になるといったリズムもあります。
季節リズムや概日リズムなどの生体リズムをつくっているのが、私たち生物が持っている「体内時計」です。哺乳類の場合、体内時計は脳の視床下部の「視交叉上核」にあることが実験によって明らかにされています。視交叉上核というのは、左右の目の視神経の束が交叉する地点の上部にある一対の神経核です。
「時計」という限り、リズムを刻む起点となる時刻合わせが常に必要となります。生体において、テレビやラジオの時報の役目を担っているのが実は、朝に目から入る光なのです。人間を含む生物は日長時間の変化を感じて季節リズムをつくり、毎日の概日リズムも、朝の光の影響を強く受けています。
最も影響を受けるのが、『睡眠』。朝起きて目から太陽光が入ると、体内時計はその14〜15時間後に眠りに入るように準備をします。夜のその時間に、睡眠を促すメラトニンというホルモンを、脳の松果体(しょうかたい)から分泌し始めるようにセットするのです。
逆に、夜の時間帯に人工的に強い光を浴びせると、概日リズムの周期は延長し、入眠のタイミングも遅くなるといいます。
それでは朝の光をまったく浴びない場合にはどうなるのか?
23歳の男性の実験例では、外界の昼夜の影響を受けていた20日目までは、きちんとした24時間周期の睡眠と覚醒の生活を続けていました。しかし、外界から遮断された21日目からは、時間の感覚がわからなくなり、睡眠・覚醒の周期が約25時間となり、睡眠時間帯が1日に約1時間ずつ後ろにずれていきました。そして、外界との遮断から2週間後には、昼夜がすっかり逆転してしまいました。
この例で分かるように、ヒトを含む昼光性生物の概日リズムは正確に24時間周期ではなく、それよりもやや長めとなっています(夜行性動物は逆にやや短め)。ヒトの周期は実際には約25時間なのですが、朝に浴びる光や食事を取るタイミング、出勤・登校時間などの社会的因子によって、うまく24時間周期で生活しているわけです。
ところが夜型の生活や夜勤を長く続けると、体内時計を調整することができず、社会生活に適応できなくなってしまいます。この状態は、「概日リズム睡眠障害」と呼ばれ、おもな分類として、
(1) 睡眠相後退症候群(すいみんそう こうたい)、
(2) 非24時間睡眠・覚醒症候群、
(3)
睡眠相前進症候群(すいみんそう ぜんしん)
|