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睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、昼間の作業効率の低下や事故をもたらす要因
となッたり、恐ろしい 心不全 や 脳梗塞 の原因ともなるので、サイレント・キラー(Silent Killer…静かな殺人者)とも呼ばれています。
■1. (概観)
睡眠時無呼吸症候群という病気の存在と(2003年2月26日、睡眠時無呼吸症候群に罹患していた新幹線運転手が居眠り運転するという事件が生じて以来)、その重要なサインが夜間の【いびき】だということがマスコミ等を通じて広く知られて以来、「いびきは短命の元凶!?」説がささやかれるようになりました。
睡眠時無呼吸症候群は中高年に多く、寝ている間に大いびきをかき、いびきが途切れたときには呼吸が止まっているというものですが、このことが、睡眠中の窒息=即、死亡というイメージをかきたてるようです。しかし現実にはそういったことはごく稀なようです。
ただし、「怖いな」という点は、近年の研究・臨床調査の結果、病的いびきである睡眠時無呼吸症候群が心不全・脳血管障害・呼吸障害の発現要因になることが明らかにされた点にあります。
普段、周囲からいびきのことで脅かされるので不眠症になったり、いびきの騒音が原因で夫婦別室で寝ているとか、果ては離婚の原因になったとか、いびきの害についてはいよいよ深刻な話が増えてきているようです。しかし睡眠時無呼吸症候群には効果のある治療法もすでに確立されています。
たまにいびきをかくというレベルでなら、おそらく人口の半分以上がいびきをかいているといえるのではないでしょうか。毎晩かならずいびきをかく(常習性いびきの)人の数も、全世界的にみれば、2〜3割に達するといわれています。日本人に対する最近の調査によれば、常習性いびきの割合は、男性の21%、女性の6.1%に及び、年代別では、男女ともに50歳代にピークがあります。
専門医も増えていますし、いびき予防や効果的な対策グッズも容易に手に入る時代です。きちんと時間をかけて治療していただき、悩みをクリアしていただきたいものです。
いびきは、睡眠中にのみ生じる現象で呼吸運動により上気道の狭くなっている部分が振動して起こるもので、極端に鼻腔・ノドの狭い重症の人ではあお向けに寝ると目覚めていても起こることがあります。
これは、眠ってしまうと上気道を構成している筋肉の緊張がゆるむためです。いびきが生じる場所は、鼻・咽頭から声帯までさまざまですが、小児期ではアデノイド、扁桃腺の肥大によることが多く、成人では後口蓋部(のどちんこのあたり)であることが多い。
後口蓋部は構造上、もともと他の部位に比べて狭くできているので、睡眠によって上気道筋の緊張が低下すると、ここを気流が通過すると振動=いびきが生じやすくなります。また、いびき音の大きさは、上気道の狭まり具合の程度や、呼吸運動の強さに依存します。
男性の方がいびきをかく割合が多い(女性の約3倍以上)理由としては、女性ホルモン(特に、黄体ホルモン)が呼吸筋(上気道の筋肉や横隔膜、肋間筋等)活動を促進する効果があるためだと考えられており、いびきをかく人の男女差は、女性の閉経期以降に小さくなります。したがって、中高年になると夫婦そろっていびきをかくという現象が珍しくなくなります。
寝不足や疲労したときにいびき音が大きくなる理由は、上気道筋活動が抑制されるため。また、アルコール、睡眠薬にも上気道筋活動を抑制する作用があるので、飲酒したり睡眠薬を服用したときにいびきが大きくなるのはこのため。
いびきというのは、いろいろな原因から起こる、いわば生理的な現象ですし、少なくとも、たまにかくいびきには全く問題はありません。
しかし、いびきが常習化し、さらに音がだんだん大きくなっていくにつれて、ノドの狭窄、陰圧化(これによって、呼吸運動に際してノドが引き込まれるような感じになる)が強くなると、自律神経系や循環動態にも影響が及ぶ上に、ノドへの刺激で眼が覚めやすくなります。
これがさらにひどくなると、無呼吸(ノドが詰まって呼吸が止まるもの)や低呼吸(呼吸量が正常呼吸の二分の一以下になるもの)が起こるようになり、前記の悪影響が顕著になっていくのです。
いびきが途切れたり(=呼吸が止まっている)、突然爆音のような大いびきをかく(=呼吸が再開するときに、いびき音が最も大きくなる)ようになったら、要注意です。
睡眠時無呼吸症候群では、昼間の居眠りが多くなること、高血圧の有病率が上昇することが知られていますが、常習性いびきが存在するだけでもこれらの頻度はやや上昇するとされています。
※ 無呼吸が無いのに、大いびきをかいて上気道内の陰圧が上昇し、中途覚醒が頻発する病態は、上気道抵抗症候群と呼ばれています。
■2. (定義)
睡眠時無呼吸症候群のなかでも最も頻度の高い、上気道閉塞を背景として生じる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(睡眠時の呼吸障害の約80%)をベースに解説を進めます。
睡眠時無呼吸症候群という名前は、1973年アメリカのスタンフォード大学のChristian Guilleminaultが提唱したsleep apnea syndrome (頭文字をとって、SAS)の訳語であり、現在はこの呼称が広く定着しています。1976年に彼らによって提示された本症候群の診断基準によると、
「夜間7時間以上の睡眠中において、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が30回以上、しかも単位時間あたりの無呼吸回数が5回以上存在すること、しかもこの無呼吸が入眠初期(寝入りばな)とレム睡眠期(眼球が動き、夢を見ることが特徴であるとされている睡眠期)だけに集中したものでないこと」
と定義されています。入眠初期は呼吸中枢からの指令が不安定になりやすく、レム睡眠期は呼吸筋の活動が低下するために、ともに健常者でも無呼吸が起こりやすい時期なので、これとは異なる時期に無呼吸が多発することが診断上重要な違いです。一晩に10〜20回くらいの無呼吸は健常者でも起こり得るとされています。
また、1999年にアメリカ睡眠医学会が作成したガイドラインでは、睡眠時無呼吸症候群の診断にあたっては、呼吸努力に関連した中途覚醒反応が重視されています。すなわち、ノドの刺激によって夜間頻回に呼吸が止まり、これに伴って中途覚醒が繰り返し起こるために、昼間に強い眠気(過眠症状)を生じる病気として、認知されています。
睡眠時無呼吸症候群の診断を行う上では、夜間睡眠中の呼吸・脳波・眼球の動き・筋活動・心拍などの生体現象を連続して記録する「終夜睡眠ポリグラフィ検査」が必要になります。
本症候群の患者さんの終夜睡眠ポリグラフィ記録をみると、頻発する無呼吸・低呼吸のために深い睡眠は著しく少なくなっており、動脈血の酸素飽和度が低下しています(つまり、酸欠状態になっています)。
睡眠時無呼吸症候群の重症度は、単位時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数によって定義されることが多く(無呼吸・低呼吸指数といいます)、この値が15回以下のものは軽症、15〜30回程度のものは中等症、30回以上(すなわち、一晩に換算すると200回以上)のものは重症と考えていいでしょう。
■3. (有病率)
1980年代以降は、全世界的にこの病気(睡眠時無呼吸症候群)の病態・有病率・治療についての研究が活発に行われています。欧米での調査結果によると、成人男性での有病率は2〜4%前後、女性ではその3分の1〜2分の1程度と考えられています。
男女合わせると、2%弱の数字が予測されます。この数字から判断すると、先に述べた常習性いびきの7分の1〜6分の1程度が睡眠時無呼吸症候群であると推測されます。
この病気の有病率には人種差があり、アジア人の顔面頚部骨格の特性(欧米人に比べて顔面の奥行きが狭い)により、咽頭が詰まりやすくなっていて、同じ程度の肥満度だと欧米人に比べてアジア人の方が無呼吸症の重症度が高いという意外な結果が出ました。もっとも、睡眠時無呼吸症候群のきわめて重要な危険因子である肥満者の数は、欧米人の方が多いので、有病率をトータルでみると、アジアと欧米では同水準にあるといえます。
本症候群の中核症状ならびに主たる合併症となるのは、過眠症状と、高血圧・心血管系合併症と、耳鼻咽喉科学的な上気道形態の問題です。このため、睡眠時無呼吸症候群に関する治療は、眠気の病気を診療する精神科・神経内科領域、呼吸器・循環器内科領域、耳鼻咽喉科領域で発展してきました。
全米で現在数百を数える睡眠障害の診断と治療を行うセンターでは、各科領域の医師が協同するかたちで、この病気の診療にあたっています。わが国での睡眠時無呼吸症候群診療の発達は欧米に比べてやや遅れましたが、一般での認知が向上するにつれて専門医療機関の数が増えています。
しかし、この病気は眠っている間に起こるので、患者さんが自分自身で気付くことは極めて稀であり、その多くが見過ごされているケースなのではないかと思われます。診察の動機のほとんどは、配偶者・家族による気付きに負っているわけです。睡眠時無呼吸症候群で正確に診断治療が行われている症例の数は、この方面の医療の進歩しているアメリカにおいてさえ、全症例のほんの一部に過ぎないといわれています。
もし、日本人の2%が睡眠時無呼吸症候群だと推定すると、250万人以上の患者さんがいることになります。仮にその7割が軽症でそれほど積極的な治療を要さないとしても、残り3割、中等〜重症に属すると思われる75万人は治療が必要ということになりますから、専門医療機関の数は、もっともっと沢山必要でしょう。
■4. (病態)
この病気は中高年層に発症することが多いのですが、大体が若い頃からいびきをかき(これは、頚部の骨格や上気道形態の特徴による)、これが中年太りによってのどがますます狭まって悪化し、やがて睡眠時無呼吸症候群に移行するというのが、典型的経過と考えられます。
若い頃からいびきをよくかく人は、太らない様に注意すべきでしょう。なお、上気道閉塞の原因になる顔面頚部の骨格や上気道組織の特徴は、遺伝的に継承されることが少なくありません。このため、家系内に無呼吸症候群が多発するケースもしばしば見受けられます。
睡眠時無呼吸症候群の発症への関与が大きいのは、【肥満】ですが、これ以外にも上気道を狭める要因になる身体条件は、本疾患の原因になり得ます。
甲状腺機能低下症(粘液水腫のためにノドが狭くなる)や、末端肥大症(舌や上気道の組織が肥大していく)も睡眠時無呼吸症候群の原因として無視できません。
また、忘れてはいけないのは、高齢者で特定の疾患や身体的要因が無いにもかかわらず、無呼吸を生じることがかなり多い(少なく見積もっても65歳以上の人口の10%以上で、夜間無呼吸が存在すると言われています)ことです。このメカニズムとしては、咽頭の硬さの変化や、呼吸中枢の老化による変化などが関与していると言われています。
睡眠時無呼吸症候群での症状のもっとも重要な原因になるのは、呼吸障害のために生じる睡眠中の低酸素状態と、無呼吸の終了時に起こる覚醒反応、上気道内狭窄に伴う陰圧の増大です。
ここまでの話で触れてきたように、睡眠時無呼吸症候群でもっとも多い症状は、昼間の眠気(過眠)ですが、夜間に中途覚醒を繰り返して「不眠」になるケースもあります。
一般に不眠を生じる症例よりも、過眠症状をきたす症例の方が、無呼吸の頻度とこれによる覚醒反応の多い重症例が多いようです。
これは、無呼吸頻度のそれほど多くない症例では、無呼吸による夜間中途覚醒後、ふたたび寝
付くまでに時間がかかるために自覚的な不眠を生じるのに対して、無呼吸頻度の多い症例では、
このような中途覚醒が習慣化していて、目覚めても数秒以内に再入眠してしまう(ただし、夜間の眠りはきわめて浅い状態が持続する)ため、夜間睡眠を自覚せずに昼間の過眠症状を生じるのだろうと考えられています。
このような昼間の眠気は、労務中や運転中の居眠りの原因となりうるため、作業中ないし運転事故の原因となる可能性が問題視されています。
数多くの研究報告を総合すると、睡眠時無呼吸症候群での居眠り運転頻度と運転事故率は一般人口での事故率の2倍から7倍にまで達すると考えられます。しかしながら、睡眠時無呼吸症候群の患者さんすべてが強い眠気を有するわけではありません(全症例のおよそ3分の1以下)。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中での居眠り運転事故率が高かったのは、無呼吸低呼吸指数45以上の重症群のみであり、それ以下の症例での事故率は一般人口と同様という調査結果もあります。したがって、重症度の高い症例を、早期に発見して治療することが重要と思われます。
現在、欧米各国の運転法規に、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの運転を制限する条項が盛り込まれており、わが国の道路交通法でも2002年以来、「未治療かつ重症の過眠症状を有する睡眠障害は免許停止・保留の条件になること」が定められています。
しかし、この病気は後述するように治療すれば確実によくなり、過眠症状が消失して運転リスクもなくなるので、円滑に治療を行い得る勤務システム/医療体制の充実が待たれるところです。
また、睡眠時無呼吸症候群は、眠気だけでなく、作業効率や注意集中力、記憶力などにも悪影響を及ぼします。健常者がビールを1〜2本飲酒した状態よりも、お酒を飲んでいない重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんの方が精神作業におけるエラー率が高いという報告があるくらいです。
また、成人に比べると発現頻度は少ないものの、学童期の患者さんでは、本症候群による眠気が原因して注意欠陥・多動状態を生じたり、学業成績が下がってしまうケースがあるので注意を要します。
意外と見過ごされやすい症状として、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、朝起床時の頭痛を感じていることが多く、欧米での調査によるとED(インポテンツ)に悩んでいるケースも少なくないようです。
もう一つ、この病気の症状として重要なのは、高血圧を来たし易いことです。これは、中途覚醒と低酸素血症が、ともに血圧上昇をもたらすノルアドレナリン分泌を促進することによると考えられています。
一般的に、血圧は昼間にくらべて夜間の方が低くなりますが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、夜間(もしくは早朝)の方が無呼吸の影響で血圧が高くなります。夜間優位に血圧が上昇している人で、しかも前述したような不規則ないびきをかくようであれば、睡眠時無呼吸の存在を疑ってみる必要があります。
睡眠時無呼吸症候群のために高血圧を生じている場合には、これを治療するとかなりの確率で血圧も正常化します。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、呼吸が止まっている間に脈が遅くなり、呼吸が再開すると急に速くなります。また、無呼吸の影響で不整脈を生じることも珍しくありません。ホルター式の携帯心電計で24時間心電図をとって、夜間のみに不整脈が集中していることから無呼吸が発見されるケースもあります。
さらにまた、睡眠時無呼吸症候群の重症例では、夜間の循環動態に影響が及び、心臓への負荷が増大するため、心不全を来たすことがあります。
近年注目されているのは、睡眠時無呼吸が心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の危険因子になる点です。高血圧を含めたこれらの循環系への影響は、本症候群が動脈硬化の形成に関係しているためとの見解が固まってきており、動脈硬化発現に関係する分子生物学的機構への研究がかなりの注目を集めています。
また一部には、睡眠時無呼吸の存在により、膵(すい)臓から分泌されるインスリンへの反応性が低下し、糖尿病発現のリスクが高まるとの意見もあります。
睡眠時無呼吸症候群がいわゆる成人病(生活習慣病)リスクと関係することはほぼ確実であり、眠っているあいだの病気で自覚しにくいため、サイレント・キラー(Silent Killer=静かな殺人者)という不気味なネーミングがあることがその恐怖を物語っています。
■5. (診断・検査)
睡眠時無呼吸症候群かどうかの判断は、患者さんの病歴や症状、睡眠状態に関するご家族からの情報があれば、専門医の問診で80%程度はつくようですが、決定的な診断と重症度の判定は、「終夜睡眠ポリグラフィ検査」によって行います。この検査は、夜通し行うので、最低一晩の入院が必要です。
最近は在宅で本症候群のスクリーニングを行う簡易検査も普及してきていますが、診断を簡易検査のみに頼るのはあまり望ましくありません。本症候群が疑われる状況のときは、専門医療機関での入院検査をお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群の確定診断がついたら、その原因となっているノドの閉塞部位を調べるためのレントゲン検査、鼻腔の通気度検査(鼻詰まりがあって口呼吸になると無呼吸は悪化しやすい)、上気道MRI検査などを行います。また、前述した合併症の存在をチェックするため、循環器系・内分泌系の検査も併せて行うことが多いです。
■6. (治療法)
さて、睡眠時無呼吸症候群とわかり、しかも中等度以上(軽症では眠気も軽く、合併症の生じる可能性が低いので、ときどき経過をチェックするにとどめることが多い)と判断されると、治療を開始することになります。
その治療法としては、夜間眠るときに呼吸器と接続した鼻マスクを装着して、ここから空気を送り込んで、ノドが閉塞しないようにする鼻腔持続陽圧呼吸治療(CPAP=シーパップ)がもっとも有効です。わが国では医療保険適応でのレンタル使用が可能で、おそらく現在2万人以上の患者さんがCPAPを使用中であると思われます。
この機械は一見ものものしく、健常者ではこれを装着するととても眠りにくいのですが、睡眠時無呼吸症候群で夜間浅眠傾向かつ日中眠気の強い人では、この治療によって無呼吸が抑えられると、深い睡眠が増加し、睡眠感が改善します。CPAP治療は、圧レベルさえ調節すれば、無呼吸をほとんど消失させることができます。-----ただし、いわば空気によるノドのつっかい棒ともいえるもので、上気道閉塞原因を取り除ける根本的治療ではないので、中止すると治療前の状態に戻ってしまうという欠点があります。
CPAP治療は、マスク装着の不快感や、機械使用のわずらわしさのために、どうしても続けられない人(患者さんの1〜2割)がいますし、前述した無呼吸低呼吸指数が20未満の患者さんでは、健康保険適応になりません。
そのような場合は、下顎を4〜7mmくらい前方に移動させることができるマウスピースを寝る前に装着して(口に含んで)、ノドを広げて、睡眠中に閉塞しないようにする治療を行うこともあります。
また、小児に多い扁桃腺肥大やアデノイドが原因になっていると思われる症例の場合には、これを切除する手術治療が優先されます。
成人の場合にも、後口蓋部を切除・拡大する手術がありますが、術後合併症の危険性があるわりに、この治療の効果は安定しておらず、無効例も少なくありません。
一般的には、まず鼻腔持続陽圧呼吸治療(CPAP=シーパップ)を試してみて、これに苦痛があり長期使用が困難な場合には、マウスピースを試みるのが良いと思われます。
以上のような治療の有効性はもちろんですが、根本的には、太っている人の場合はまず”減量”する必要があります。ただし、肥満は本症候群発病の原因としてよりも発病の促進因子となっている場合が大半なので、やせることで無呼吸数は減少するものの、完全にはなくならない可能性が高いのです。
また、前述の通り、アルコールや睡眠薬は上気道筋の緊張をゆるめ、無呼吸を悪化させる作用があるので、睡眠時無呼吸症候群の人はこれらを避けるべきですね。よく、いびきや無呼吸が、横向きに寝るとなくなったという話を聞きますが、これは仰向けの方が上気道の筋肉が垂れ下がってきて閉塞しやすいためで、確かに軽症者の場合には寝方を変えることが有効な一面もあると思われます。ただし、重症例では寝方を変えるだけで無呼吸をなくすことは不可能ですし、そもそも一晩中寝返りをしないで横向きに寝続けることは困難かも知れません。それよりは、効果の安定した上記の治療法をお勧めします。
無呼吸のために夜間窒息死するということは、きわめて稀です。しかし、ここまで述べてきた通り、重症例を放置すると高血圧や心・脳血管障害になりやすく、未治療の睡眠時無呼吸症候群患者の追跡調査を行った研究では、夜間後半ないし早朝の突然死(心筋梗塞や脳梗塞による)が少なくないようです。
また、重症度や治療との関係について調べた論文では、無呼吸の単位時間あたりの回数が20回以上で、しかも未治療で経過した症例は、一般人に比べて死亡率が高かったといいます。
(He J, Kryger MH, Zorick FJ, et al.: Mortality and apnea index in obstructive
sleep apnea, Chest 94: 9-14, 1988.)
しかし、軽症例は生命の危険はほとんどないし、重症例でも適切な治療を受けた方では、健康な人と生命予後の差はない様です。大切なことは、この病気が疑われたときは、決して侮らず、専門医による正確な診断・治療を受けることでしょう。
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